ハドロンを形成するクォークとグルーオンは、QCD により定式化された相互作用に従います。QCD は一見単純なラグランジアンで記述されますが、その非摂動性、非線型性のために、量子場の理論として他に類を見ないユニークな性質を持ちます。
我々の研究室では高温・高密度クォーク・グルーオン物質の理論、強電場・磁場中のクォーク物質の物性とトポロジー、中性子星研究、重イオン衝突実験の現象論など、 原子核ハドロン物理よりも更に大きな「場の量子論」 的な枠組みから、QCD を初めとする様々な難問に挑戦しています。
ハドロン理論グループは、極限環境の物理を場の量子論の方法で理論的に明らかにすることを目指しています。例えば、RHICやLHCで行われている重イオン衝突実験では、数兆度の超高温、MRIの一兆倍を超える強磁場、竜巻の中心の百垓倍を超える高速回転が実現すると言われており、こうした極限環境は驚くほど複雑で興味深い物理に満ちています。
ハドロン理論グループでは、QCDに限らず、場の量子論一般に関わる広い問題にチャレンジすることができます。量子異常、トポロジカル励起、場の実時間発展など、場の量子論全般に幅広い知見をもつメンバーから、日々刺激と研究アイデアを得ることができます。
QCDの高密度領域では、符号問題のため第一原理計算ができません。そのため、高バリオン密度の物質については、いまだにわかっていないことが多数残っています。ハドロン理論グループでは、QCDと中性子星現象論を車の両輪のように考えて、高密度物質の性質を解明することを目指しています。なお、中性子星は、連星合体、冷却、グリッチ、キック、パスタ構造、超流動・超伝導など多彩な現象を示し、それら自体も興味深い研究対象です。
格子上で場の理論を定式化することにより、様々な量子現象を第一原理計算することができます。QCDの解析だけでなく、トポロジカル量子系・拡張重力理論・量子コンピュータなどの幅広い分野を横断する視点から、新しい計算手法を積極的に提案し、興味深い物理現象を探求しています。
ハドロン理論グループは、場の理論の知見を生かし、物性理論にも積極的に取り組んでいます。スカーミオン励起やトポロジカル超伝導の有効理論に現れる θ 項といった概念は、歴史的にはハドロン物理学で発見されたものです。セミナーに物性理論の研究者もお呼びするなど、周辺分野の発展を常に取り入れています。
ハドロン理論グループは、物理学への機械学習の応用にも取り組んでいます。ハドロン物理は複雑で魅力的な問題に満ちており、その全く新しいアプローチとして機械学習が注目されています。ハドロン物理グループはメンバー全員が使える強力な GPU を備えており、あなたの研究アイデアをすぐに試すことができます。
研究室のイベントを教えてください。
主なイベントは、週一度のジャーナルクラブと、月数回のセミナーです。ジャーナルクラブでは、研究室メンバーが面白い論文を交代で紹介します。セミナーでは気鋭の研究者をお招きし、最先端の研究のお話をしていただきます。また、M1 (又は研究室内定者による M0) ゼミでは、場の量子論に関する発展的な教科書を輪読します。
研究はどうやって進めていくのでしょうか。
こちらをご参照ください。
大学院入試について教えてください。
物理学専攻では例年5月頃に大学院入試ガイダンスを実施していますので、そちらへの参加をご検討ください。詳細は物理学専攻のホームページをご参照ください。
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