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中性子星環境下でのクォーク・ハドロン連続性

Y. Fujimoto, K. Fukushima, W. Weise, "Continuity from neutron matter to two-flavor quark matter with 1S0 and 3P2 superfluidity", arXiv:1908.09360 [hep-ph]

中性子星は、主に高密度のハドロン物質(特に中性子)によって構成される天体である。ハドロン物質をさらに高密度にしていくと、ハドロン内に閉じ込められていたクォークが溶け出し、クォーク物質になるといわれている。クォーク物質と一口に言ってもその相状態は多岐にわたるが、高密度の場合にはクォークのクーパー対が凝縮し、カラー超伝導状態になることが知られている。u, d, s クォークの3フレーバー対称性が課されたときに、ハドロン相はカラー超伝導クォーク物質に相転移なく連続的に繋がっていく(クォーク・ハドロン連続性)。これは、QCD の対称性の破れのパターンに基づく予言である。

しかしながら、この3フレーバー対称な系というのは過度に理想化された環境である。現実には s クォークは u, d クォークよりも重く、3フレーバー対称性は成り立たない。より現実に即した中性子星の環境下では、2フレーバー対称性が良い対称性である。さらに、中性子星では中性子物質がスピン3重項、P波 (3P2) の超流動になっていることも考慮する必要がある。

我々は、2フレーバー対称な場合に、中性子星物質 (3P2 中性子超流動) がクォーク物質に連続的に繋がるということを示した。クォーク相では、大昔から知られていた2フレーバーカラー超伝導のクォーク対に加えて、d クォーク対が 3P2 状態で凝縮している。この d クォーク対が中性子星物質との連続性を担保しているのである。我々のシナリオは、中性子星の状態方程式の現代的な現象論的構築に対して、より現実的な環境下で理論的な背景を与える点において有用である。